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京都地方裁判所 昭和57年(ワ)2175号 判決

原告

山田君子

ほか一名

被告

秋田二三男

ほか一名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告山田君子に対し、各自一八一〇万二二一二円及びこれに対する昭和五五年七月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告らは、原告山田信義に対し、各自一〇四二万三九四一円及びこれに対する昭和五五年七月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生(以下本件事故という。)

被告秋田二三男(以下被告秋田という。)は、昭和五五年七月二日午前四時五分頃、京都府宇治市槇島町二四の五三国道二四号線路上において自動車を運転中、原告山田信義(以下原告信義という。)が運転し原告山田君子(以下原告君子という。)が同乗する自動車に追突し、そのため原告君子に対し頭部外傷Ⅲ型、左眼窩・胸・膝打撲、腰椎捻挫、外傷性頸腕症の傷害を、原告信義に対し頭部打撲、頸椎捻挫、左下肢挫傷、腰椎捻挫の傷害をそれぞれ負わせた。

2  責任の原因

(一) 被告秋田は、前方注視を怠つた過失により本件事故を発生させたものであるから、民法七〇九条に基づき本件事故により原告らに生じた損害を賠償する義務がある。

(二) 被告石渡運送株式会社(以下被告会社という。)は、右加害車両を保有しこれを自己のために運行の用に供していたものであり、また被告秋田の使用者であつたから、自動車損害賠償保障法三条あるいは民法七一五条に基づき本件事故により原告らに生じた損害を賠償する義務を負う。

3  損害

(一) 原告君子について

(1) 休業損害

原告両名は本件事故当時ナイトサパー「サンモール」(以下サンモールという。)を共同経営していたが、同店の営業による事故直前三か月(昭和五五年三月二六日から同年六月二五日まで)の営業利益は月平均三五六万九七三六円であり、右営業利益に対する原告らの寄与率は原告君子六割、原告信義四割である。

本件事故により原告両名は昭和五五年七月二日から同年一〇月四日まで九五日間入院し、この間は就労不能であり、原告君子は同年一〇月五日から昭和五六年一二月二日まで約一四か月間、原告信義は昭和五五年一〇月五日から昭和五六年一〇月二六日まで約一三か月間いずれも通院を余儀なくされ、この間労働能力の半分を失つた。

従つて、原告君子は、原告両名の入院九五日間につき得られたであろうサンモールの営業利益の金額である一一三〇万四一六四円と、原告両名及び原告君子の通院期間である約一四か月間につき得られたであろうサンモールの営業利益の半額である二四九八万八一五二円との合計三六二九万二三一六円の六割相当の二二二一万八四一八円の得べかりし利益を失つた。

(2) 後遺障害による逸失利益

本件事故による原告両名の傷害は、原告君子につき昭和五六年一二月二日、原告信義につき同年一〇月二六日症状が固定し、いずれも自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表一四級一〇号(局部に神経症状を残すもの)の後遺障害を残した。

これにより原告両名の労働能力はいずれもその一〇〇分の五が失われ、かつ右後遺障害の残存期間は二年間であると考えられるので、前記得べかりし営業利益月平均三五六万九七三六円を基礎として年五分の割合による中間利息を新ホフマン方式(係数一・八六一四)により控除して算出すると、合計三九八万六八二三円となるところ、原告君子はその六割相当の二三九万二〇九三円の後遺障害による得べかりし利益を失つた。

(3) 慰謝料

本件事故により原告君子の被つた精神的苦痛に対する慰謝料としては、入通院に対し一五二万円、後遺障害に対し六〇万円の合計二一二万円が相当である。

(4) 入院雑費

原告君子は前記のとおり九五日間入院し、その間雑費として一日当たり少なくとも一〇〇〇円の割合による合計九万五〇〇〇円の支出を余儀なくされた。

(5) タクシー代金

原告両名は、本件事故により原告信義が行つていたサンモールの従業員の送迎ができなくなつたため、従業員に対してタクシー代金として合計二四万五七二〇円の支出を余儀なくされ、原告君子はその二分の一相当の一二万二七六〇円の損害を被つた。

(6) 損害の填補

原告両名は被告らから本件事故につき合計一四〇〇万円の支払を受けたので、原告君子はその六割相当の八四〇万円及び自動車損害賠償責任保険から支払を受けた七五万円を原告君子の前記損害に充当する。

(7) 弁護士費用

原告君子は、本訴の提起追行を原告ら訴訟代理人に委任したが、その費用として三〇〇万円の支出を要する。

(二) 原告信義について

(1) 休業損害

原告信義は、前記のとおり労働能力を喪失し、本件事故がなければ得られたであろうサンモールの前記営業利益三六二九万二三一六円の四割相当の一四二七万八九四一円の得べかりし利益を失つた。

(2) 慰謝料

本件事故により原告信義の被つた精神的苦痛に対する慰謝料としては、入通院に対し一五〇万円、後遺障害に対する六〇万円の合計二一〇万円が相当である。

(3) 入院雑費

原告信義は前記のとおり九五日間入院し、その間雑費として一日当たり少なくとも一〇〇〇円の割合による合計九万五〇〇〇円の支出を余儀なくされた。

(4) 損害の填補

原告信義は、被告らから前記のように支払を受けた一四〇〇万円の四割相当の五六〇万円及び自動車損害賠償責任保険から支払を受けた七五万円のうち後遺障害に対する慰謝料六〇万円を原告信義の前記損害に充当する。

(5) 弁護士費用

原告信義は、本訴の提起追行を原告ら訴訟代理人に委任したが、その費用として一〇〇万円の支出を要する。

4  よつて、原告君子は被告ら各自に対し、損害残金二〇七九万八二七一円の内金一八一〇万二二一二円及びこれに対する不法行為の翌日である昭和五五年七月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を、原告信義は被告ら各自に対し、損害残金一一二七万三九四一円の内金一〇四二万三九四一円及びこれに対する不法行為の翌日である昭和五五年七月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1及び2は認める。

同3(一)(1)のうち、原告両名の入院期間及びサンモールの存在を認め、その余は否認する。サンモールの営業主体は原告信義であり、収益は同原告に帰属するものである。またサンモールは原告両名が入通院中も営業を続け収益をあげており逸失利益はない。

同3(一)(2)のうち、原告両名が後遺障害としてその主張の一四級一〇号の認定を受けたことを認め、その余は否認する。

同3(一)(3)は争う。

同3(一)(4)(5)(7)は否認する。

同3(一)(6)は原告両名が被告らから一四〇〇万円、原告君子が自動車損害賠償責任保険から七五万円の支払を受けたことは認める。

同3(二)(1)(3)(5)は否認する。

同3(二)(2)は争う。

同3(二)(4)は原告ら両名が被告らから一四〇〇万円、原告信義が自動車損害賠償責任保険から七五万円の支払を受けたことは認める。

第三証拠〔略〕

理由

一  本件事故の発生及び責任について

請求原因1及び2は当事者間に争いがない。

従つて被告秋田は民法七〇九条、被告会社は自動車損害賠償補償法三条に基づき本件事故により原告両名が被つた損害を賠償すべき責任がある。

二  損害について

1  原告君子について

(一)  逸失利益

(1) サンモールの営業主について

成立に争いのない甲第一五ないし第二三号証、原告君子本人尋問の結果(第一回)により成立の認められる同第一四号証、右尋問の結果(第二回)により成立の認められる同第三六号証並びに原告君子(第一、二回)及び同信義各本人尋問の結果によれば、原告両名は夫婦であり、昭和五四年四月頃飲食店営業を行うことを考え、共同してその計画、開業準備にあたつたこと、その際原告両名は実質上夫婦の共有財産である原告信義名義の土地建物を三五〇〇万円で売却しその代金で別の土地建物を三三〇〇万円で購入し同原告所有名義で登記を了したうえこれをサンモールの店舗となし、また京都中央信用金庫より一五〇〇万円を同原告名義で借入れ、サンモールの店舗の改装費、什器・備品購入費等の営業資金として使用したこと、原告両名は昭和五五年二月頃サンモールの営業を開始したが、その営業に関する行政機関(保健所)への届出は原告君子名義でなしたこと、その後本件事故に至るまで原告君子はサンモールのママとして稼働し、同店の従業員(一〇名前後)の指導やお客の接待等の他会計も担当し同店の売上帳簿や従業員の給与帳簿等を記載し、一方原告信義はサンモールの従業員の送迎や開店前の準備等に従事していたこと、昭和五五年度のサンモールによる事業所得は原告君子の所得として申告されていることが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右事実によるとサンモールは原告両名の共同経営にかかるものであつて、原告両名がサンモールの共同営業主であるというべきである。

(2) サンモールの得べかりし営業利益について

前掲甲第一四号証、原告君子(第一、二回)及び同信義各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、サンモールの営業が一応軌道に乗つた昭和五五年三月二六日から本件事故発生直前の月末決算日である同年六月二五日までの九二日間におけるサンモールの総売上額はその売上帳簿(甲第一四号証)によると合計一九八八万三三八〇円であること、右売上額は、地方税法一一九条、京都府府税条例五〇条によつて原告ら飲食店の経営者等に特別徴収義務の課せられている料理飲食等消費税の税額相当の金額を含んだものであることが認められる。

ところで右税額相当の金額は本来料理飲食等の消費行為者を納税義務者として京都府に納入されるべきものであつて、特別徴収義務者の収入となるべき性質の金員ではないので、売上額から控除するのが相当であるところ、原告君子本人尋問の結果(第二回)により成立の認められる甲第二四号証の一ないし八、同第二五号証の一ないし七、同第二六号証の一ないし三三、同第二七号証の一ないし二二、同第二八号証の一ないし一六、同第二九号証の一ないし一三、同第三〇号証の一ないし一七、同第三一号証の一ないし一三、同第三二号証の一ないし二二、同第三三号証の一ないし一三、同第三四号証の一ないし一六、同第三五号証の一ないし一八原告君子(第一、二回)及び同信義各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、本件事故当時のサンモールの右売上のうち料理飲食等消費税が概ねその一〇〇分の七程度を占めていることが認められる(原告君子本人尋問の結果((第一回))中右認定に反する部分は直ちに措信し難い)のでこれを控除すると、昭和五五年三月二六日から同年六月二五日までのサンモールの真の総売上額は合計一八四九万一五四三円(一円未満切捨、以下同じ)であると認められる。

そして右総売上額から控除すべき必要経費の額は、前掲甲第一四、第三六号証によれば、合計九一七万四一七〇円であることが認められるので、結局昭和五五年三月二六日から同年六月二五日までのサンモールの総営業利益は九三一万七三七三円であり、本件事故後においても右相当の営業利益を得続けることができたものと推認される。

(3) 原告君子の寄与率について

前掲甲第一四、第三六号証並びに原告君子(第一、二回)及び同信義各本人尋問の結果によれば、原告両名は他の従業員三名と共に本件事故により受傷したため就労できず、代替人員を確保するなどしてサンモールの営業を続けたが、人件費の増大等から本件事故後のサンモールの営業利益は右事故前よりかなり減少したことが認められるところ、前記認定のサンモールの営業規模・内容、原告君子の労務の種類・性質、原告信義、従業員の労務による寄与度等を彼此勘考すると、サンモールの営業利益に対する原告君子の寄与率は一〇〇分の三〇と認めるのが相当である。

従つて、原告君子の一日あたりの労働の対価は、前言サンモールの営業利益額に右割合を乗じ日数で除した三万〇三八二円と認められる。

(4) 原告君子の労働能力喪失割合及び期間について

原告君子が本件事故による前記受傷のため昭和五五年七月二日から同年一〇月四日まで九五日間入院したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第二ないし第六号証、乙第三号証の一の二、同号証の三及び原告君子本人尋問の結果(第一回)並びに弁論の全趣旨によれば、原告君子は退院後昭和五五年一〇月五日から同五六年一二月二日までの四二四日間蘇生会病院で通院治療を受けながら(内実治療日数一二五日)、制限された範囲で家事に従事していたこと、その間の昭和五五年一一月初旬から同五六年二月初旬にかけては通院しておらず母の付添看病などをしていたこと、同原告は自覚症状として頭痛、吐気、腰痛、頸部痛等を、他覚症状として第四腰椎々体の軽度骨棘化、右下肢開脚制限及び疼痛、頸部筋緊張及び後頭部圧痛等を残し、右症状は昭和五六年一二月二日固定したことが認められ、原告君子本人尋問の結果(第一回)中右認定に抵触する部分は直ちに採用し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

なお右後遺障害が自賠責保険上自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表一四級一〇号に該当する旨の認定を受けていることは当事者間に争いがない。

右認定の原告君子の傷害の部位程度、治療期間、後遺障害の内容程度、職種等に鑑みると、同原告は昭和五五年七月二日から同年一〇月四日まで九五日間その労働能力の全部を、同年一〇月五日から昭和五六年一二月二日まで四二四日間その労働能力の一〇〇分の二五を、同月三日から二年間その労働能力の一〇〇分の五を喪失したものと認めるのが相当である。

(5) そうすると原告君子の逸失利益は次のとおり七一三万八六五三円となる。

(算式)

昭和55年7月2日から同年10月4日まで95日

3万0382×95=288万6290

同年10月5日から昭和56年12月2日まで424日

3万0382×424×0.25=322万0492

昭和56年12月3日から2年間

3万0382×365×0.05×1.861(新ホフマン係数)=103万1871

(二)  慰謝料

前記認定の原告君子の傷害・後遺障害の内容程度等に照らすと、原告君子が本件事故によつて被つた精神的苦痛に対する慰謝料としては、一八〇万円と認めるのが相当である。

(三)  入院雑費

原告君子は前判示のとおり本件事故による受傷のため九五日間入院しているところ、入院雑費として一日七〇〇円の支出を余儀なくされたものと推認されるので、入院雑費合計六万六五〇〇円の損害を受けたことが認められる。

(四)  タクシー代金

原告両名は、本件事故により原告信義が行つていたサンモールの従業員の送迎ができなくなつたため従業員に対しタクシー代金として合計二四万五七二〇円の支出を余儀なくされ損害を受けた旨主張するが、これを肯認するに足りる証拠はない。

(五)  損害合計額

以上によれば原告君子の損害合計額は九〇〇万五一五三円となる。

(六)  損害の填補

原告両名が被告らから一四〇〇万円、原告君子が自動車損害賠償責任保険から七五万円の支払を受けたことは当事者間に争いがないので、これを(一四〇〇万円については原告君子の前記損害合計額が原告両名の損害合計額一四四五万九六〇五円に対し占める割合に応じた概ね八八〇万円)原告君子の前記損害合計額九〇〇万五一五三円に充当するとその残額はないこととなる。

(七)  弁護士費用

以上によれば仮に原告君子がその主張のように本件訴訟のために弁護士費用の出費を要するとしても、右出費と本件事故との相当因果関係を肯定することはできない。

2  原告信義について

(一)  逸失利益

(1) 前記認定のとおりサンモールの本件事故前三か月(九二日間)の営業利益は九三一万七三七三円であるところ、前記認定のサンモールの営業規模、内容、原告信義の労務の種類・性質、原告君子、従業員の労務による寄与度等を彼此勘考すると、原告信義のサンモールの営業利益に対する寄与率は一〇〇分の二〇と認めるのが相当であるから、同原告の一日あたりの労働の対価は、二万〇二五五円と認められる。

(2) 原告信義が本件事故による前記受傷のため昭和五五年七月二日から同年一〇月四日まで九五日間入院したことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第七ないし第一三号証、乙第三号証の一の一、同号証の二、同第一〇号証及び原告信義本人尋問の結果によれば、原告信義は退院後昭和五五年一〇月五日から同五六年一〇月二六日までの三八七日間蘇生会病院で通院治療を受けた(内実治療日数七二日)こと、その間の昭和五五年一一月初旬から同五六年二月初旬にかけては通院していないこと、同原告は退院当時病状は肩こりや腰痛はあつたもののかなり軽快し、その後も右病状に特段の変化はなく、自覚症状として頸部筋緊張、腰痛を、他覚症状として頸腰椎々体の不安定性、頸部・両肩筋圧痛、両側大後頭神経圧痛、頸部筋緊張等を残して、右症状は昭和五六年一〇月二六日固定したことが認められ、原告信義尋問の結果中右認定に抵触する部分は直ちに採用し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

なお右後遺障害が自賠責保険上自賠法施行令二条別表後遺障害別等級表一四級一〇号に該当する旨の認定を受けていることは当事者間に争いがない。

右認定の原告信義の傷害の部位程度、治療期間、後遺障害の内容程度、職種等に鑑みると、同原告は昭和五五年七月二日から同年一〇月四日まで九五日間その労働能力の全部を、同年一〇月五日から昭和五六年一〇月二六日まで三八七日間その労働能力の一〇〇分の一五を、同月二七日から二年間その労働能力の一〇〇分の五を喪失したものと認めるのが相当である。

(3) そうすると原告信義の逸失利益は次のとおり三七八万七九五二円となる。

(算式)

昭和55年7月2日から同年10月4日まで95日間

2万0255×95=192万4225

同年10月5日から昭和56年10月26日まで387日間

2万0255×387×0.15=117万5802

昭和56年10月27日から2年間

2万0255×365×0.05×1.861(新ホフマン係数)=68万7925

(二)  慰謝料

前記認定の原告信義の傷害・後遺障害の内容程度等に照らすと、原告信義の本件事故によつて被つた精神的苦痛に対する慰謝料としては一六〇万円と認めるのが相当である。

(三)  入院雑費

原告信義は、前判示のとおり本件事故による受傷のため九五日間入院しているところ、入院雑費として一日七〇〇円の支出を余儀なくされたものと推認されるので、入院雑費合計六万六五〇〇円の損害を受けたことが認められる。

(四)  損害合計額

以上によれば原告信義の損害合計額は五四五万四四五二円となる。

(五)  損害の填補

原告両名が被告らから一四〇〇万円、原告信義が自動車損害賠償責任保険から七五万円の支払を受けたことは当事者間に争いがないので、これを(一四〇〇万円については原告信義の前記損害合計額が原告両名の損害合計額一四四五万九六〇五円に対し占める割合に応じた概ね五二〇万円)原告信義の前記損害合計額五四五万四四五二円に充当するとその残額はないこととなる。

(六)  弁護士費用

以上によれば仮に原告信義がその主張のように本件訴訟のために弁護士費用の出費を要するとしても、右出費と本件事故との相当因果関係を肯定することはできない。

三  結論

よつて、原告らの本訴請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小山邦和)

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